災害発生時における3つの責任

 災害が発生したときの責任としては、刑事責任、民事責任、社会的責任の三重の責任が問われます。
 なお、労働基準監督署の災害調査時や臨検監督時において、労働安全衛生法違反として機械設備の使用停止命令や作業停止命令などの行政処分が行われたり、法令違反の是正を勧告されます。また、建設業などでは、労働安全衛生法違反の死亡災害や重大災害が発生した場合には、労働基準行政が国土交通省(建設担当部署)にその事実を通報することによって、その災害発生の事業者はその後公共工事の入札の参加が一定期間について停止されることがあります。

刑事責任

 災害が発生すると、労働基準監督署の職員がその発生状況や原因を調査し、労働安全衛生法違反の疑いがあり、必要と認めた場合には、労働基準監督官は刑事訴訟法上の特別司法警察員として労働安全衛生法違反の被疑事件としての捜査を行われます。この場合、工場長や作業所長、管理監督者などの実行行為者から事情聴取が行われるのみならず、例え本社から遠く離れた地方の事業場の災害であっても、法人の代表である社長またはこれに準ずるトップも労働基準監督官の事情聴取を受けることもあります。また、労働安全衛生法は両罰規定となっているため、その結果によって実行行為者が送検されると事業者も送検されることとなります。
 また、警察による業務上過失致死傷の違反の有無などについての捜査も行われます。これらの捜査の結果、労働基準監督機関および警察機関から管轄の地方検察庁へ事件送致されます。送致された事件は、担当検察官により起訴するかどうかについて聴取調査などが行われることから、この際、事業者としての責任の有無を判断するために会社の代表者を含め責任者に対する出頭を求め、被疑者としての取調べが行われ、この結果、必要に応じ起訴されることとなります。

民事責任

 災害によって被った労働者の身体・生命・健康などの損害について、民事上の請求権に基づいて事業者に対し行われる賠償請求の事案は増加しており、近年最も多く問われたものとして安全配慮義務違反があります。
 このように、事業者が安全管理に万全を尽くしていないために災害が発生したならば、労働安全衛生法令などに違反していなくても、被災者などの利害関係者から安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われることになります。
 ここで、安全配慮義務とは、事業経営を行う者が労働者を雇い入れた場合に事業者に課される義務、すなわち、事業者は労働契約に従って労働者を働かせ、賃金を支払わなければならないことのほか、業務の遂行に関して労働者の身体や生命に生じる危険から労働者を保護する義務のことです。

社会的責任

 事業場において、災害の発生、有害物の発散、長時間労働などによるストレスの増大などで労働者の安全と健康が損なわれた場合には、企業は大きな経済的損失を被るのみならず、近隣地域の住民に直接・間接に損害や不安を与え、厳しい責任追及を受けることがあります。企業は、CSR(企業の社会的責任)の観点からも安全衛生対策に万全を期すことにより、地域社会から信頼され、安全と安心の印象を与えることがますます重要となっています。

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